※この記事は本編の感想です。本編は13巻で完結し、その後の大学生活を描く第14巻も刊行されています(集英社の第14巻紹介)。第14巻を読んだ感想は含めていません。

猛男たちの優しさで、気持ちよく読み進められる

俺物語!!は、読み終わったときに「ああ、いい読書体験だった」と心から思える作品だ。3000冊以上読んできた中で、これだけ「気持ちよく読み進められる少女マンガ」を私は他に知らない。

理由はシンプルで、登場人物にイヤなやつが一人もいないからだ。それでいて、ストーリーが薄っぺらくならない。ここのバランスが、この作品の本当に凄いところだと思う。

なんてったって、たけおが良すぎる

この作品の話をするとき、まず最初に出てくるのはやっぱり剛田猛男(ごうだ・たけお)のことだ。

たけおの良さは、説明が難しい。説明できるくらい単純じゃない。ただ一つ確実に言えるのは、男女問わず、たけおを嫌いな人間はいないと思うということ。もちろん「恋愛対象として」じゃない。「友達として」だ。

巨漢で、見た目はちょっと怖い。でも中身は純粋で、優しくて、人を疑うということを知らない。誰にでも本気で向き合うし、自分が損することよりも、相手の幸せを先に考える。あの素直さは、読んでいるこっちの心まで洗ってくれる。

こういう人間が周りに一人いたら、人生がだいぶ違うんじゃないか。読んでいるとそんなことを考えてしまう。たけおという存在がそこにいるだけで、もうこの作品は成立してしまっている。

登場人物にイヤなやつが、一人もいない

これは少女マンガとしては結構珍しいことだと思う。

少女マンガにありがちな「主人公をいじめてくる女」「彼氏を奪おうとする女」「ヒロインを否定する母」みたいな、読んでてストレスのかかる役回りが、この作品には本当に一人もいない。

たけおの親友・砂川誠(すな)は、イケメンで頭もよくて、客観的に見たらたけおより「モテる側」のはずだ。なのに、たけおを心の底から大事にしている。たけおの良さを、たけお本人より分かっている。すなが横にいてくれる、それだけで読んでいる側も安心する。

たけおの彼女・大和凛子(やまと)は、可愛いだけのキャラじゃない。たけおの中身を、ちゃんと見ている。見た目で判断しない、本質を見る目を持っている。それでいて素直で、まっすぐで、たけおと並んでいる姿が本当に微笑ましい。

すな姉も、登場するたびに場が温かくなる。たけおの母ちゃんも、言うまでもなくいい母ちゃんだ。脇役に至るまで、誰も悪意を持っていない。これだけ「いい人」しか出てこない作品で、こんなに退屈しないのは奇跡に近いと思う。

「いい人ばかり」で、ちゃんと面白い

「みんないい人なら、ドラマがないんじゃないの?」と思う人もいるかもしれないが、これが全然そんなことはない。

たけおと大和の関係の進み方、お互いを思いやる気持ちの描写、すなとの友情、家族とのやり取り。一つ一つのエピソードに、ちゃんと心が動くポイントが用意されている。派手な事件は起きない。けれど、「次のページが読みたい」という気持ちは終始途切れない。

これは作劇として相当うまい。普通、葛藤や悪役を入れないと物語は推進力を失う。でもこの作品は、「いい人たちの関係性が深まっていくこと」だけで物語を進めてしまう。読んでいて常に気持ちがいい。読後感のクオリティが、ジャンル問わず3000冊の中でもトップクラスに高い。

すなにも、幸せになってほしい

たけおと大和は、きっと幸せになる。これは読んでいて疑いがない。

でも、すなも幸せになってほしい。読み終わってからずっと、私はこれを思っている。

たけおを支え、大和を見守り、誰よりも周りを大事にしているすなが、いつかちゃんと自分の幸せを掴んでほしい。あれだけ周りにいいものを与え続けている人間が、自分のことになると引き気味になるのは、読んでいてちょっと切ない。

スピンオフでもいい。すなの恋愛話、誰か描いてくれないだろうか。本気で読みたい。

Verdict
総評 — 俺物語!!を読むべきか
◆
こんな人におすすめ
  • 心が疲れている、ささくれた気持ちをリセットしたい人
  • ハッピーな読後感が欲しい人
  • 「いい人ばかり出てくるけど面白い」という稀有な体験がしたい人
  • 少女マンガをあまり読んでこなかった人(イヤな展開がないので入りやすい)
  • 本編が完結した作品を一気読みしたい人(本編13巻)
◇
こんな人には向かないかも
  • ドロドロした三角関係や修羅場が読みたい人
  • 主人公が痛い目に遭わないと物語に入り込めない人
  • 強い悪役の存在感を求める人
読後感、トップクラス

3000冊以上読んできた中で、読後感のクオリティが飛び抜けて高い一作。たけおの良さを噛み締めながら、すなにも幸せになってほしいと願わずにはいられない。少女マンガを敬遠してきた人にも、自信を持っておすすめできる。心が疲れているとき、本棚から取り出して読み返したくなる、そういう作品。

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